ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

こんな雑談をしてきたその14 「アイスプラネット」について再び

ローテーション的に「アイスプラネット」の時期がやってまいりました。授業をやっていまして、また新しい発見がありました。というかある言葉が死語になりつつあることがわかりました。ではその2つの言葉

その①「さすがに頭にきた。」

キーボードに八つ当たりする人のイラスト(男性会社員)

これは「ぐうちゃん」に子供扱いされたと思った主人公が「怒ってしまった」ときの言葉です。一応確認として「頭にきたって意味はわかるよな?」と聞いたところ、生徒が何だか微妙な顔つきをしているんですよ。

意味はわかるらしいんだけど、ひょっとして?と思って「日常で聞いたり使ったりする人?」と聞いてみると、1/4~1/3くらいの生徒が手を挙げた、つまり半分以上の生徒には既に「死語」に近いということがわかりまして、結構衝撃的でしたね。

「腹が立つ」の方が認知度は高いようだし、怒ったときには何て言う?と聞くと、多いのは「ムカつく」「ムカムカする」あるいは「キレる」「ブチ切れる」の方が断然使用頻度が高いようです。「腹が立つ」が死語っぽくなってるのは残念な感じがします。

ここからは授業とは別の、完全なる雑談です。「キレる」の方は、調べてみると諸説その1「堪忍袋の緒が切れる」から 諸説その2 こめかみに浮かび上がった青筋が怒りの余り切れそうになるから……だそうです。我々老害世代は例によって「俺たちひょうきん族」とかで、片岡鶴太郎が「ぷっつん」という言葉を使って表していたのが印象的でしたが、彼が語源というわけではないようです。

そしてもう一つ、老害世代に印象深いのが、SF作家の筒井康隆氏の断筆宣言です。ある小説の中の表現について抗議を受け、「頭にきて」執筆活動を止める、と宣言したのですが、そのときに使ったのが「あたしゃきれました。プッツンします。」という言葉でした。わざとでしょうが、老獪な作家が、そんな流行語を使うんだ、と思ってびっくりしたのです。キレる、とかブチ切れる、という言葉は、個人的に何となくスラング的な印象があったのですが、意外と由緒正しく、頭にきたと同じレベルの汎用性があったんだと、改めて感じました。

その②「地上十階建てのビルぐらいの高さなんだ。そして、海の中の氷は、もっともっとでっかい。」の部分についてです。これは世界中を巡ってきた椎名誠の分身である「ぐうちゃん」が主人公に宛てた手紙の一節で、「世の中には実際に見えていないことの方がずっと多い」とか「自分の常識だけが全てではない」ことについての「隠喩」だったり「暗示」だったりします。テーマにかかわるとても重要な一節なので、授業では必ず触れますが、そのときに発問するのが「ここの表現から分かる、実際に見えている部分よりも、もっと多くの真実が隠れていることを表す慣用句は何か」、というものです。氷山の水面下には全体の7割~8割が隠れていることから出来たこの慣用句に、今回ピンと来た生徒はクラスに1人いるかいないかでした。

氷山の一角のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや 教科書の氷山は「一角」ではなく丸めでしたが。

ローテーション的には概ね3年に1回の割りで、このアイスプラネットの授業をし、そのたびにこの発問をするのですが、明らかに年々認知度が下がっているのを感じます。(中には「頭隠して尻隠さず」と答える生徒がいて、軽くかすっているけどちょっと違うという、国語科教師としては、話の広がるとても有り難い反応です)

結論 ちょっと偉そうですが、故事ことわざ慣用句が生徒の中でどんどん風化していくのはかなり残念な話ですので、気づいたものについてはできるだけ授業の中で触れていこうと思っています。