久々に見返すと、国語に関する話題を全然書いていなくて、なんと半年ぶりだということがわかりました。「羊頭狗肉」極まれり、反省。
←この反省猿も知っている人少なくなりましたな。
さて、例によって年々生徒にはありとあらゆる言葉が通じづらくなっている教科書の題材です。時期的に2年生だと「盆土産」が終わったころです。盆土産は主人公の少年の視点なので、他の人物の気持ちは発言や表情、表現から読み取るしかないわけですが、やはり最後の「終バスで帰る場面」の、少年と父親の心の機微を読み取るのが面白い。で、例年この場面の「心のつぶやき」を考えさせ、時には班で話し合わせて寸劇をやらせたりしてきました。(最近、コロナもあったし面倒になってきたからやってないけど←こら)
でもやはり、中学生レベルだと三浦哲郎氏の「セリフ以外」の表現の読み取りが甘いんですよ。そこが読み取れないと、面白さが半減してしまうとおもうんですよね。
(1)「村はずれのつり橋を渡り終えると、父親はとって付けたように、『こんだ正月にかえるすけ、もっとゆっくり』と言った。」の部分。
ここで父親はどんなことを考えていたかを考えさせると、ほとんどが「今回は一日半しかいられなくてごめんな」的なことを書いてきます。
これはこれで正解なんですが、「とってつけたように」が活きてこない。(そもそも「とってつけたように」の意味がわからないので説明が必要でしたが)この「とってつけたように」から、「そこまで二人とも無言で歩いていた」ということがわかる。したがってここは父親が、「このままずっと何も話さないで終わるわけにはいかない。何か話さないと。そうだ!」という心の葛藤を読み取ってほしい。で、これが
(2)「すると、なぜだか不意にしゃくり上げそうになって、とっさに『冬だら、ドライアイスもいらねべな。』と言った。」につながります。ここでも「しゃくり上げる」の説明が必要。「しゃっくり」みたいにヒクヒク泣くことですが、「なぜだか不意に」の部分は、「また冬まで会えないことに気づいて急に寂しくなった」という読み、そして「泣いたら父親が困るからごまかすためにとっさに何か答えないと、と思った」的な読みまでは大抵たどり着きます。但し、ここで本当に読み取ってほしいのは「夏だったから父親は眠りを寸断して苦労して帰ってきた」=「冬ならそんな苦労しなくてもいいはず」という、「父親に対する思いやりにあふれた発言」であること。これを読み取ってほしい。ところがそれに対して、
(3)「『いや、そうでもなかべおん。』と、父親は首を横に振りながら言った。『冬は汽車のスチームがききすぎて、汗こ出るくらい暑いすけ。ドライアイスだら、夏どこでなくいるべおん。』と、父親はせっかくの息子のナイスフォローを、完全にぶった切ってしまうのです。だからこの後、
(4)「それからまた、停留所まで黙って歩いた。」につながってしまうわけです。
もちろん、父親に悪気があるわけはありません。ですがここまで速達の文言や、「珍しく冗談を言うので」とか「黙ってたばこをふかしていた」等の伏線でわかるように、「かなり無口で、気の利いたことや冗談なんかめったに言わない」生真面目で不器用な父親の性格がここにつながります。(こうしてふたりの会話をぶった切ってしまったことに、父親は気付いたのか気付いてないのか? これははっきりとはわかりません。)そして別離のシーン
(5)「~それで頭が混乱した。『んだら、さいなら』というつもりでうっかり、『えんびフライ。』と言ってしまった。
「混乱した」は、まあ照れ隠しの言い訳のように見えますね。で、ここで生徒はここでの少年の気持ちを「えびフライうまかったからまた買ってきてね」と答える割合が非常に高い。「うっかり」もそうですが、言って「しまった」という表現は、まさに言ってから「しまった!」という気持ちなわけで、えびフライがほしくて言ってるわけではなく、むしろ言ったことを後悔しているのを読み取れない生徒は非常に多いです。混乱した、のもあり、すっかり口癖になっていた、あるいは深層心理とも考えられますが、この「しまった」という文末表現の意味をきちんと読み取らないといけない。
※そういえば、「しまった」の読み取りについては、「アイスプラネット」にも頻繁に出てきました。曰く①「~あだなになってしまった」②「~その話をしてしまった」③「~ほら吹きになってしまったのだ」④「~卒業してしまった」⑤「~いなくなってしまった」等。「しまった」は「そのことを残念に思う」意味合いですから、アイスプラネットでも主人公の気持ちの読み取りには大変有効です。私は基本、アイスプラネットは「僕」の「ぐうちゃん」に対するイメージがプラスかマイナスかで全編を読ませていきますが、上記の①がプラス、②、③がマイナスは読めても、④⑤をマイナスに取る生徒はとても多いです。「残念に思う」のだから、④⑤はプラスイメージですよね。
(6)「父親は、ちょっと驚いたように立ち止まって、苦笑いした。『わかってらあに、また買ってくるすけ・・・・・・』の部分についても、大部分の生徒は「そんなにうまかったのか」「仕事頑張ってまた買ってくるからな」くらいの読み取りで終わります。あとは「さいなら、と言うと思ったのにえんびフライと言われて驚いた」くらいです。ですがここは「苦笑い」の読み取りをつけたい。つまり、「俺とのお別れよりもえびフライ(もう次のお土産)かよ・・・・・・(苦笑)」という気持ちですね。クラスでひとりか二人くらいは、読み巧者がいて書いてきますけれど、あまり期待はできませんw。
そしてこの後、以前に書いた「あみだかぶりの癖のあるハンチングをなぜ押さえたか」という読み取りにつながるわけですが、ぜひここまで突っ込んで読ませたいと思っています。(まぁクラスに数名、面白さを感じてくれる生徒がいますが、大半は猫ミーム化してますけどね・・・・・・残念!)
みんなくちポッカーン、って。すみませんね力量不足で。
ひさびさに国語関係のことを書いたら長文になってしまいました。失礼しました。