ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

「走れメロス」の授業でまたまたまた考えたことと、ことわざに関するボヤキ

さて、前回に続き徒然なるままにメロスの授業をしている最中に、こんなことを考えてしまいました。(←モットマジメニヤレー from「帰ってきたヨッパライ」byフォーククルセイダーズ

 

「メロスと掛けて、〇破首相と解く、そのこころは・・・・・・・」石〇首相のところは「〇舫元議員」でもいいのですが、さて私は何と解いたか。そのこころは「特大ブーメラン大好き」です。どうでしょう、おわかりでしょうか。

まあ石〇茂氏やらが〇舫元議員が、何か言うたびに自分の過去の発言に返ってくる、「特大ブーメラン発言」を連発しているのは皆さんご存じですよね。でも、メロスも彼らに負けず劣らずのブーメラン連発なんですよね。(メロス関係の記事はずいぶん書いてきましたが、このことは以前書いたと思っていたのに読み直したら書いていませんでしたので、ネタにさせていただきます)

 

(安倍首相に「選挙大敗の責任を取らネバならない」と言ったときの画像かな?)

さて、メロスのブーメラン発言、というか「お前言ってること矛盾してるぞ」、というものはあちこちありますが、大きなものを3点挙げていきます。

その1 私は、ちゃんと死ぬる覚悟でいるのに。命乞いなど決してしない。ただ、──」と言いかけて、メロスは足元に視線を落とし、瞬時ためらい、「ただ、私に情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えてください。・・・・・・の部分。

 意外と見逃しがちですが、「なぜディオニスから視線を外し、発言をためらったのか」という発問で、分かる生徒は分かるブーメランです。そう、「命乞いなど決してしない」と言っておいてすぐ「三日間の日限を与えてください」と命乞いしているから、「言いづらい」わけです。鋭い生徒だと、「だからそこまでタメぐちだったのに、そこから敬語になったんだ」と読み取ります。(太宰も芸が細かいねぇ)

その2 (闇堕ちのシーンで)「村には私の家がある。羊もいる。」・・・・・・あれれ~、おかしいよ~!!

 また使っちまった。テヘペロ

もうおわかりですね。はいそうです。村を出るとき「宝といっては妹と羊だけだ。他には何もない。全部あげよう。」と言ってましたね。これは恥ずかしい。「やっぱダメでした、テヘペロ」と言って村へ帰るつもりでしょうかね。そこまで恥知らずな行動を取ろうかと考えるほど「闇堕ち」してしまったわけです。ご愁傷さまでした。いひひひ。(by爆笑問題 太田光

その3 まあ前の二つも強烈ですけれど、一番凄まじい巨大ブーメランはこれですね。

闇堕ちシーンから「正義だの、信実だの、愛だの、考えてみればくだらない。」これは強烈。しかも近い。これと同じページに、こう書いてあります。「友と友の間の信実は、この世でいちばんほこるべき宝なのだからな。」

「一番誇るべき宝」を「くだらない」と捨ててしまったら、もう何も残っていませんね。何一つ信じられるものがないと、投げやり、すてばち、やさぐれ、自暴自棄になる場面。これこそまさにブーメラン、というか「お前さっき言ったこともう忘れたのか」という、皮肉な場面です。どうでしょうか、「ブーメラン大好き」と解いたのはこういうことです。

 

ところで、この「正義だの~」の周辺、つまり「ああ、もういっそ、悪徳者として生き延びてやろうか。村には私の家がある。羊もいる。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すようなことはしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみればくだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかもばかばかしい。私は醜い裏切り者だ。どうとも勝手にするがよい。やんぬるかな。」とメロスが未だかつて考えたことのないことばかり頭に浮かぶ場面ですが、なぜここまでやけくそになったのか。これも生徒に考えさせてみる発問です。

なぜかというと、この直前に「一番メロスが考えたことのないこと」を頭に浮かべたからです。つまり「君だけは私を信じてくれるにちがいない。いや、それも私の、独りよがりか?」=セリヌンティウスを疑う、という最悪の考えになってしまいます。

ここまでメロスはずっと「自分が悪い」と自責の念に苦しみましたが、ここで初めて「他人のせい」にしてしまいます。「人間は苦しいと人のせいにしたがる生き物」ですが、心の弱ったメロスも、例外ではなかったのでしょう。

 

で、問題はここからです。この「友を疑う」という、メロスにとっての最大の禁忌(タブー)を犯すしてしまった以上、それ以後の悪しき考えがぞろぞろ出てくるのに歯止めがきかなくなるのは当たり前。

さて質問です。このように「一度悪事に手を染めたら、とことんまで悪事を続けるのをやめられなくなる」ことを、「ことわざ」で何と言うでしょうか?

・・・・・・全滅でした。恐る恐る、「毒を食らわば皿まで」というんだが、聞いたことある人は?・・・・・・全滅でした。これって、私の勤務校だけの話でしょうかね?

聞きませんでしたが、メロスの「お前の兄の一番嫌いなものは、人を疑うことと、それからうそをつくことだ」(とか政治家の手のひら返しとか)みたいに、「言わなきゃいいのに自分で自分の首を絞める」ということわざ、つまり「雉(きじ)も鳴かずば撃たれまい」なんて、当然全滅でしょうね。味わい深いんだけどなあ。

わたしは個人的に、ことわざ、慣用句、故事成語の類いが大好きですし、伝えていくべき文化だと思っていますが、もう完全にレッドデータブックです。絶滅危惧種です。正直くだらない難解な論説文とか載せるより、あるいは訳の分からん道徳の授業より、ことわざをたくさん知って、そこから生きた人生の知恵を学ぶほうが、ずっと有益だと思うのです・・・・・・というボヤキでした。どっとはらい