前回古典の授業の中で使った小ネタなどを、思いつくままに打ってみましたが、そういえばこの教材のときにはこんな小ネタ(というかムダ話?)をしていたなぁ、と思い出すことが。他にもいろいろとありましたので、そこはかとなく書きつけてみようかと。(けっしてスノッブぶるつもりはないのですが、鼻につきましたらスルーしていただければありがたいです。)おそらくとびとびでシリーズ化することになると思います。では、今回のお題はこちら。光村図書2年生「アイスプラネット」 作 椎名誠
私は一時期、椎名誠にドハマリしていた時期がありました。といっても別に嫌いになったわけではなく、あまりに出る本出る本買っていたため、他の本と合わせて家の中の面積を圧迫してきたものだから、ある時期に家のほとんどの本をブック○フに売りはらい、よっぽどでなければ新しく本を買うのをやめよう、ということにしたのです。それ以来、椎名誠の本も買っていませんが、「わしらは怪しい探検隊」や「哀愁の街に霧が降るのだ」あたりから、もうむさぼるように読みまくっていました。嵐山光三郎や椎名誠などの軽みのある、俗に「昭和軽薄体」と呼ばれる文の書き方には、かなり影響を受けました。(いや、お前のはぜんぜん違うだろー!というツッコミは甘受します。)
何もこの画像を貼る必要はないわなぁ・・・
閑話休題(それはさておき)、この「アイスプラネット」の登場人物である「ぐうちゃん」こと「津田由紀夫」はフリーターです。ためたお金で、「カメラを片手に世界のあちこちを旅している」という設定は、モロに椎名誠自身の生き方が投影されています。というか、教科書用に書き下ろした作品なので、おそらく椎名誠自身が、中学生くらいの若者に、こんなことを伝えたいという内容を、自分自身がかつて撮った写真を使って(大ナマズやアイスプラネット)そのまま書いたものでしょう。そもそもぐうちゃんの風体が「細い目」「まっ黒」なのも、椎名誠自身そのままです。ぐうちゃんの語る「ほら話」も、椎名誠自身の体験談を活かしたものだと思います。若かりし時の思い出の小説やエッセイも面白いのですが、世界のあちこちを巡ってのエッセイ?ルポルタージュ?も、例の文体も相まって、文字通り抱腹絶倒の面白さなのです。
とはいえ、時代設定はフィルムカメラの時代だし、ちょっと使う言葉も古いものがまざっています。では、ムダ話その1。
「ぐうちゃんは、僕の母親の弟だけど、僕から見て何という親戚にあたるか、漢字で書けるかな?」と質問してみます。生徒は関係としては「オジサン」であることはわかりますが、漢字ということになるとわからない子がほとんどだし、文字がわかっても使い分けはわかっていません。そこで黒板に「伯父さん」「叔父さん」「小父さん」と三種類書き、「さてぐうちゃんはどのオジサンでしょう?」と質問し、どう違うのかを考えさせます。たまに正解を出す子もいますが、たいていは「父親の方と母親の方の違い」とか、甚だしいのは「男が伯父さんで女が叔父さんでどちらでもないのが小父さん」とか答える子がいたりしますw(ただ、昨今のLGBTQ?とやらの情勢から、単純に笑い飛ばすことができなくなってきたような・・・嫌な渡世だなぁ。)
お読みの皆さんはご存知とは思いますが、一応違いを説明しますと、「伯父(母)さん」=自分の親の兄(姉) 「叔父(母)さん」=自分の親の弟(妹) 「小父(母)さん」=血縁のない年配の人・・・ということを教えますと、みんな「なるほどー!」と納得します。したがって正解は「叔父さん」です。結構生徒は「ほー。」と納得します。(そういえば「伯夷叔斉」の話を、大学のとき漢文演習で習ったのを思い出しました。あの兄弟の名前で憶えておけばよいのですね。)続いてムダ話その2をば。
最初のページに出てくる言葉で、現代の生徒には理解できない言葉が「いそうろう」です。もちろん作者もそれはわかっているので、「」をつけています。先生説明してくださいね、ということでしょう。で、「いそうろう」の説明を付け加えるわけですが、さてなんと説明するか。(そもそも、アホな男子の中には、「いそうろう」という言葉の響きだけで、ニヤニヤしたり笑いだしたりする奴がいます。い○漏、と頭の中で変換しているわけですね。どうもこの思春期の男子のアホさときたら・・・とはいえ、私自身思い当たる点は多々ありますが。)
さて、辞書の説明どおりに「他人の家に住んで食べさせてもらっている人」でもいいんでしょうが、まず生徒には「どんな漢字だと思う?」と質問します。すなわち「居候」、その家の主人から「おーい、居るかぁ?」「はい、ここに居候」と答えるわけです。「ここにおります。」という返事のことだよ、と立場の弱さを教えます。そして、居候とは「仕事をしない、あるいはしくじって親に追い出される、これを勘当というわけだが、困ったドラ息子を親戚のおじさんやおばさんが助けてやり、家において食べさせてやる。こういう人を居候というのだよ。」と生徒に教えると、かなり多くの生徒が「それってニートじゃね?」といいます。
さて、ぐうちゃんは「ニート」なのでしょうか?これを考えさせたときに、生徒の多くが「ニート」と「ひきこもり」を同一視していることがわかりました。ぐうちゃんはまったく働いていないわけではなく、目的のためには自発的に、定職ではないにせよ、専門的なスキルが必要な、きちんとした仕事ができるわけで、働きたくなくてぐうたらしているのとはちょっと違うと思いますので、ニートとは言わないし、ましてや全国を回っているくらいだから、全くひきこもりではありませんね。むしろアクティブ〇鹿の域かと。
そして古川柳を二つ紹介します。①「これ、ぐうちゃんの好物」のところで、「居候三杯目にはそっと出し」(ぐうちゃんはたぶん大食いでしょう。椎名誠得意の「ワシワシとかきこむ」タイプの。でも、ただで食べさせてもらってるから、ちょっとは遠慮したんじゃないでしょうかw)
②「なにか力仕事などが必要になったとき」のところで「居候嵐に屋根を這い回り」(嵐の日に瓦とか直させられてるんでしょうかね。ぐうちゃんならやりそうだ。ただし自らすすんで。)居候の立場が少しでも明確になれば、と思って、全然関係ないけど教えたりします。
気づいたらムダ話を2つ書いただけで、とんだ長文になってしまいました。まだ1ページしか進んでません。これだもの授業が進まないわなぁ。ということでアイスプラネットについてその2に続きます。よろしければまた読んでやってください。