新学期が始まりまして、たいてい最初の授業では「オリエンテーション」と称して、ノートの使い方や、授業の受け方、評価評定の仕方などを説明する時間になりますね。もちろん私も最低限必要なことは伝えますが、後半はこんな内容を使って「動機付け」とします。もちろん自己満へそ曲がり流ですので、一般の先生には参考にならないでしょうが、お暇つぶしにご覧いただければ幸いです。
さて、まず私は「何のために勉強するのか?」という大命題をぶちかまします。1年生なんかは特に目をパチクリさせて、必死に答えを探します。まぁ大抵は「将来のため」「自分が社会に出て困らないため」「高校進学するため」「良い仕事に就くため」など答える生徒が多いです。非常に健全でありもっともで、文句の付けようがありません。で、それに対して私は個人的な見解として「損をしないために勉強しろ」と言います。もっと言えば、国語は「人にだまされないために勉強しろ」と言います。この辺り、イタイケな1年生に毒を吹き込むようでちょっと気が引けますが、「一番楽してお金儲けするのはどうしたらいいか?それは人をだましてお金を巻き上げることだ。だから今世の中に振り込め詐欺だのなんだの、詐欺がこんなにも広がっている。人の話を聞いて、書いてあることを読んで、なんか変だな?と気づくことが大事だ。」と教えています。かなりへそ曲がりですが、誰かは伝えるべき内容だと思っています。で、「人はわりと簡単にだまされる」という例として、以下のような問題を出して生徒に考えさせることにしています。
(ちなみにこれらの問題は、私が小中学生のころ、つまり今から50年程前に大ベストセラーになった多湖輝氏の「頭の体操」シリーズからお借りしています。内容的にネタバレであり、著作権に触れる可能性があるかもしれませんが、紹介させていただきます。解説は別の回でお示ししますが。)まずは軽く2問。ただし、実際の本とは文言の細部が違っているかも知れません。
問①急な坂道で、重そうな荷物を載せた荷車を運ぶ親子連れがいた。後ろで押している人に「前で引いているのはあなたの息子さんですね?」と聞くと「そうです」という。ところが、前で引いている若者に「後ろで押しているのはあなたのお父さんですね?」と聞くと「いいえ違います。」という。こんなことがありうるか。
そもそも「頭の体操」の著者である多湖輝さんは心理学の方の先生で、先入観や錯覚、思い込みで頭脳がミスリードされる問題をたくさん出していますが、この問題なんかはまさに「先入観でだまされる」という説明にぴったりです。ちなみに今回1年生に出題したところ、大体2/3は「何のことやらサッパリ」でした。(ただし、ヒントになってしまうかも知れませんが、昨今の情勢からちょっとこの答えの解説にはナーバスな面が出てきました。)さて、おわかりでしょうか?
続いてもう一問。
問②あるところに、顔かたちがそっくりな二人の子供がいた。生年月日も両親も同じだというので、「では君たちは双子だね?」と聞くと「違います。」という。こんなことがありうるか。
忘れてましたが、問①にも問②にも、「二人とも嘘は言っていない」という前提が必要でしたね。生徒が真っ先に考えつくのは「嘘をついていた」という答えですが、それではすっきりしない。ということで、出題の後に「誰も嘘はついていない」という補足は付け加えました。この②なんかも、微妙な国語的表現の違いで、思考が一定方向にミスリードされてしまういい例だと思います。ほんの一カ所表現を変えれば、わりと簡単に思いつくのですが。ということで、「微妙な表現の違いによって印象も変わる」ということの説明にぴったりでした。これも2/3は「何のことやら」でしたね。さて、おわかりでしょうか?
ちなみに、残り時間によりますが、オリエンテーションではあと4問用意してあります。それらについてはまた次回書きます。お後がよろしいようで。