ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

教科書の中の微妙な表記の変化について

さて、前回「星の花の降るころに」の凡ミス(自習時間の後に「給食なしで」いきなり昼休みになっていた点)について、教科書会社に電話したときに、せめて「自習時間」を「給食時間」に直すだけで解決できますよ?と一応提案したのですが、採用されなかったみたいですね。「昼休み」を「休み時間」にすることでもよさそうですが、主人公はそこそこ長い話になることを想定していたでしょうから、ここは「昼休み」でなくてはいけない。となるとやはり給食時間からの昼休みにしてほしいところです。(給食時間の終わりに、教室内で騒いでいる生徒がいることが、良いか悪いかは別として・・・)

話変わって、前回説明的文章の「モアイは語る」についても、いろいろと思うところを述べさせていただきました。何度かの教科書検定を経て、結構なロングセラー?の教材になっていますが、ある一カ所で微妙に表記が変わっていまして、なぜなんだろう?と疑問に思っていました。その表現とは何かというと

(旧表記)このまま人口の増加が続いていけば、二〇三〇年には八十億を軽く突破し、二〇五〇年には百億を超えるだろうと予測される。

(現表記)このまま人口の増加が続いていけば、二〇三〇年には八十億を軽く突破し、二〇五〇年には九十億を超えるだろうと予測される。

という違いです。私自身は非常に大雑把な性格だし、まぁ十億くらいどうでもいいや、と流すこともできるのですが、これが(旧表記)九十億→(新表記)百億ならば素直に納得なんですが、実際の表記が(旧表記)百億→(現表記)九十億と、逆なのが腑に落ちない。この何度かの検定の間に、人口増加の割合が下がってきた、ということなのか?しかしそんな話は聞いたことがないんだがなぁ?

ということでグーグル先生に聞いてみると、あるサイトでの二〇五〇年の予想は九十八億人、となっていて、まぁ「九十億を超えるだろう」は合っているんですけど、だったらそれ以前の「百億」という数字はどこから出てきたのだろうか?などということが引っかかるんですよねぇ。(偏執狂まっしぐらで恐縮ですが)

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似たような話をもう一つ。これまたロングセラー?でベストセラー?の、ヘルマン・ヘッセ作、髙橋健二訳の「少年の日の思い出」の中からです。お読みいただいている方々は覚えていらっしゃいますかね?あなたが覚えている、「僕」が「エーミール」のところから盗み、はずみでつぶしてしまったのは、「何という虫」の標本でしたか?

ヤママユガ」と答えたあなた、きっとかなりなご高齢ではナイスミドルですね。若い現役世代は「クジャクヤママユ」と答えるんですよ。ご存じでしたか?改めて確認しましたが、旧教科書も現行教科書も「髙橋健二訳」とあるので、きっとなんらかの事情で教科書会社の方で変えたのだろうと思います。(ここで本来なら原典のドイツ語表記にあたってみれば良いのですが、そんな熱意も向学心もないのが申し訳ない。第一、大学で第二外語ドイツ語を取ったはずなのに、グーテンモルゲンとグーテンタッグとダンケシェン、くらいしか覚えていないのが何というか情けない。あ、あと小池某のおかげでアウフヘーベンも。・・・あれ?シュワルツランツェンレイターって何だっけ?)

勝手な推論として、おそらく私自身がそうだし、結構そう言っている生徒も多いのですが、「蛾が嫌い」だからじゃないか?と仮説を立ててみました。いや、生徒の中には、ワークブックに載っているヤママユガクジャクヤママユの写真を見るだけで悲鳴を上げる子もいたりするんですよ。だから少しでも「蛾」っぽさを打ち消すために、ちょっと綺麗っぽいイメージのある「クジャクヤママユ」と表記を変えたんじゃないのか?そこにはひょっとしたら生徒からの苦情なんかも影響してるんじゃないのか?なんてくだらないことを考えていました。(世の中のほとんどの方の答えは「どうでもいい」だとは思いますけどね。)と、ここまで想像したところで「グーグル先生」に聞いてみると、こんな記述がありました。(ナンデモシッテルグーグルセンセイスゴイ)

ドイツ文学者であり、虫屋でもある岡田朝雄氏によれば、クジャクヤママユという蛾には3種あり、それぞれオオクジャクヤママユ、クジャクヤママユ、ヒメクジャクヤママユと言われる。そのうちオオクジャクヤママユは少年のポケットに入れるには大きすぎ、ヒメクジャクヤママユはそれほど珍しい蛾ではないことから、物語の蛾はクジャクヤママユが妥当だと推測している。

・・・なるほど。「ヤママユガ」で画像検索すると、とてもポケットに入りそうもない巨大な蛾がヒットしてきます。(15センチくらい?)うーむ、お好きな方にはたまらないかと(©西原理恵子)思いますが、私にはかなり気持ち悪い。いくら「思わず」とはいえ、ポケットに入れるなんて信じられない。鳥肌が立つ。結局、「サイズ」というまことに現実的な、そして学術的な裏付けによって、「ヤママユガ」という大雑把なくくりから、リアルな「クジャクヤママユ」という表記に変わった、ということが分かりました。やっぱり餅は餅屋ですね。何かの本で(ギャラリーフェイク、だったかな?)蝶の収集は金持ちの究極の趣味、みたいなことが書いてあったと思いますけど、何事もヲタクマニアの方の知識ってのはつくづく凄いと感心しました。

そういえば、「昆虫の写真が気持ち悪い」とか言われて、ジャポニカ学習帳の表紙から昆虫のアップの写真が消えて花になった、なんてニュースも昔ありましたよね。今どうなってるのかな?

では、話のついでに次回から「少年の日の思い出」についての話など書いていこうと思います。お時間があればおつきあいください。どっとはらい