ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

教科書の角をつつく その1

炎上覚悟で言わせてもらいますが・・・(といっても、この文章、それほど多くの人の目に触れてもいないので、炎上するはずもないのですが)どうもこの、昨今のジェンダーやら何やら、いろいろと目の付け所が面倒くさくてしかたないのです。そもそもいちゃもんクレームをつけようと思えば、何にだって付けられますよね。例えばこの教科書の題材を、「そういう目で見て」どう感じますか?

「(前略)一点一画もおろそかにしない大ぶりの筆で、「向田邦子殿」と書かれた表書きを初めて見たときは、ひどくびっくりした。父が娘宛ての手紙に「殿」を使うのは当然なのだが、つい四、五日前まで、「おい、邦子!」と呼び捨てにされ、「ばかやろう!」の罵声やげんこつは日常のことであったから、突然の変わりように、こそばゆいような晴れがましいような気分になったのであろう。 文面も、折り目正しい時候の挨拶に始まり、新しい東京の社宅の間取りから、庭の植木の種類まで書いてあった。文中、私を貴女とよび、「貴女の学力では難しい漢字もあるが、勉強になるからまめに字引を引くように。」という訓戒も添えられていた。
 ふんどし一つで家中を歩き回り、大酒を飲み、かんしゃくを起こして母や子供たちに手を上げる父の姿はどこにもなく、威厳と愛情にあふれた非の打ちどころのない父親がそこにあった。(後略)」(向田邦子「字のない葉書」)

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断っておきますが、私自身は三元号を生きている昭和生まれの男ですし、この文章を読んでも特に違和感も嫌悪感も感じません。「そんな感じだったよなぁ・・・。」ってなもんです。むしろ懐かしい感じすらします。(もちろん、罵声やげんこつや手を挙げることを肯定はしませんけどね。)でも、下線を引いた部分だけ、見る人が見たら「こんなパワハラやDVやセクハラや男女差別だらけの文章を教材として載せるなんて!教科書会社の見識を疑うざます!謝罪と賠償を要求するざます!qあwせdrftgyふじこlp;@:!」となる可能性はゼロではないですよね?(この「ざます」あたりが、そもそも突っ込まれたらジェンダー問題的にアブナイかもしれないんですけどね。叱られるスレスレを狙って書いてしまう悪い癖がありまして・・・)

この「字のない葉書」は、「戦争教材」でもあるのでしょうが、作者が自立した人間と認められていく前段、戦争中のあるエピソードの中で初めて厳格な父親の意外な一面を見たことについての驚きの後段に分けられる、中々良い随筆だと思います。その全体像の流れを無視して、一部だけを切り取って問題視するようなことが、昨今世間で多すぎやしませんか?某テレビとか某コメンテーターとか、某政治家とか某新聞とか・・・あー、「嫌な渡世だなあ。」(←座頭市より。勝新太郎懐かしいわ。)

かといって、3年生の教科書の詩「わたしを束ねないで」(新川和江)の、この一節なんかはもろに・・・うーーーーん。

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

この詩自体は、かなり以前の教科書から載っているので、昨今の情勢を教科書会社が忖度したものではないはずですが、しかしなんだかあらぬ陰謀論を考えてしまう今日このごろでした。あ、そこのあなた!「いくら何でも考えすぎだ。」と思いましたね?いや、そうだと思うんですよ。でもこんなのよりももっとひどい、重箱の隅をつついた上でつついた棒の先をさらに針で探るような、そんなことを結構毎日まいにち目にしているような気がするんですよ・・・嫌な渡世だなぁ・・・しみじみ。

私がよく見るYouTubeその1

このコロナ禍の中、あまり外出も出来ず、かといってテレビで面白い番組もなく、YouTubeばかり見ている、という人はかなり増えたのではないかと思います。で、御多分に漏れず私も、テレビでニュースを見たら、リモコンのYouTubeボタンを押して、好みの番組をボーッと見ているのが食後のルーティーンになっています。好んで見る(聞く)番組は、キャンプ系の動画、パチ〇ロの動画、保守派政治系動画(※別に言う必要もありませんが、私は右翼に近い保守派です。もう脱退してからかなりになりますが、こんな私でも30代半ばまでは教職員組合員でした。脱退した経緯については、またそのうち書いてみようと思います。)がメインです。あとは健康・体質改善動画、格闘技系動画など。さてそこで、今回は私がよく見るキャンプ系動画サイトをとりあえず1本オススメしてみます。

その1 Boomer outdoor

体重100キロ超えのポッチャリ?系アラフォー男性の動画です。登録者が現時点で2万数千人しかいないのが不思議なくらいの面白さです。動画の展開も無茶苦茶面白し、時には結構ハチャメチャなこともするんだけど、上記の「一泊一善」もそうだし、薪割りの危険性や、キャンプ場の盗難、キャンプ場以外の場所での野営についての啓蒙動画などを見ると、「キャンプマナーを向上させたい」「せっかく盛り上がってきた世間のキャンプ熱がおかしな方向に進んでいかないようにさせたい」という願いを、(暑苦しくないレベルの節度を持って)伝えようと思ってらっしゃるんだと感じます。本人の体型はかなり暑苦しいですがw(←まさかこんなブログをご覧にはならないと思いますが、これくらいのシャレは通じる方だと思っています。言い訳じゃなくて。)

特に感心したのが、道具のレビューです。神経を使いつつも、忖度なく評価するのは当然として、一度オススメした道具を、使っていく中で短所が見つかった時は、その短所について説明し、オススメしたことについての謝罪動画を新たに作ってアップしたことです。(それも、オススメしたエアーマットが、寝た時に思ったよりもキュッキュキュッキュと大きな音が出る。ひょっとしたら周りに迷惑がかかるかもしれない、という内容でした。最初に使った時にはシュラフカバーを掛けていたから音が出なかったようですが、逆に言えばそのくらいの対策で何とでもなるレベルの短所だし、私だったらスルーすると思います。)ライトをルアー代わりにする悪ふざけや、軽く下ネタが入ったりもするけれど、人間的には信用できる人のように思えます。それと、ごくまれに出てくる奥さんとの話題やからみもほのぼのして笑ってしまいます。で、奥さんとのからみで言えば、オススメなのがコレw↓

youtu.be

「ま、C寄りのBにしとこか。」がもうツボwww。このセリフが台本じゃなくて奥さんのアドリブだったとしたら・・・奥さん天才!(おまけになかなかの美人!)

ちなみに、バイクとキャンプと食べ物についてのYouTubeをアップしている「チュートリアル」の徳井さんの動画もよく見るのですが、この徳井さんが師匠と仰いでいるのがMr SYUさんで、そのMr SYUさんが師匠と仰いでいるのがこのboomerさんらしいです。(と、武田バーベキューさんの動画の中で徳井さんが語っていました。具体的に名前は出していませんでしたが。)

・・・気づいたらYoutuberの名前ばっかりぞろぞろ並んで、訳が分からなくなってきたので、今回はこれで終わります。お笑い系キャンプ動画?」をお探しの方はぜひ一度ごらんください。(そういう系が好きなお方なら「何をいまさら」だとは思いますけれどご勘弁ください。)

allowance camper(お小遣いキャンパー)の密かな楽しみその1

今回から、アウトドア関係の内容については「お小遣いキャンパーの密かな楽しみ」としてまとめることにします。最初は「ロートルキャンパー」か、「プアマンズキャンプ」にしようかと思っていたのですが、まぁ曲がりなりにも公務員だし、プアマンというのも語弊があろうかと思いましてallowance(お小遣い)camperとすることにしました。(閑話休題。どこかで聞いた話ですが、昔のサバンナRX-7とか、フェアレディZとかって、俗に「プアマンズポルシェ」と呼ばれていたそうですね。ポルシェと比べると格段に安いのに、性能はかなりスゴイ、ということらしいです。でも、RXー7やフェアレディのどこがプアマンだよ!と思いますけどね。これを「コスパが良い」とか「リーズナブル」と言い換えると、結構イイカンジに見えてくるのは、言葉のマジックってやつでしょうなぁ。)

さて、お小遣いキャンパーとして、春になったらご案内のロートルギアも使ってキャンプに行こうと企てている身ですが、ちょっとはカッコイイ道具も欲しい。でもお小遣いが・・・。ということで、今月お小遣いで買ったものをご紹介。

驚いたことに、リサイクルショップチェーンのの「セカンドストリート」が、キャンプ用品を、しかも中古ではなく新品を販売していることを、つい最近知りました。家の近くにあるセカンドストリートを覗いてみると、今回買った物以外にも、テーブルやケトルなど、かなり「リーズナブル」なお値段で売っているんですよ。一目見てすぐに思わず2点買ってしまいました。

その1 アルコールストーブ

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これは正直、今まで一度も使ったことがなかったのですが、ソロキャンプに使うには意外と簡単そうだし、煤も出なさそうだし(洗うのが面倒)ちょっと欲しいなぁと思っていたんですよ。税別999円なら、まぁお小遣いのうちですし。ということで、カミさんに内緒で買ってしまいました。消火用の蓋と、五徳、収納袋まで付いていて、というならまぁお買い得だと思いました。(ちなみに、ネットで有名メーカーのものと比べると、トランギアの1/3、エスビットの1/2くらいの値段でした。)しかし、結果的に燃料代の方が高くつきそうな気がムンムンするのですが、すでにお使いの皆様、そのあたりいかがなもんでしょうか?ぜひご教授願いたいと思います。

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その2 薪ばさみ(でいいのかな?)

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以前のブログで、セリアの110円薪ばさみを使っている画像を上げましたが、使ってみてどうも頼りない感じがしていたし、YouTubeでヒロシさんが使ってて、カッコイイなぁと思っていたものとそっくりだっので、これも勢いで買ってしまいました。税別1600円ならまぁいいかと。

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ちなみに、ネットでテオゴニアのものを検索してみると、倍以上の値段なようで、「しめしめ、半額以下で買えるとは、これは我ながらイイ買い物をしたわい。ウヒヒヒ」とほくそ笑んでいたのですが・・・なんと!

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先日載せたDCMの鉄板と、全く同じものが1000円以下で売られているではありませんか!私は通販で買ったので、送料と合わせて2000円近く払ってしまったのですよ。つまり、片や半額でアルコールストーブと薪バサミを買い、片やここで買えば半額だった鉄板を倍額でポチってしまったわけです。(まぁ通算では2500円くらい得して、1000円くらい損をした、って感じなんですけどね。)

・・・読み返すとすごくみみっちい話になってしまいました。コロナのせいで部活動ができず、お小遣いである部活動の指導者費が、2月は0円なんですよね。ほとんどない貯金をどう切り崩していくか、毎日まいにち結構惨めな戦いをしております。こんなみみっちい話で良ければ、また読んでやってください。(・・・やっぱりプアマンズキャンプで良かったのかも。)



 

 

 

 

 

 

なんちゃってキャンパーの密かな楽しみその6

さて、ずいぶん間があいてしまいました。部活もなくなったある休みの日に学校に来て、テストの丸付けやら成績処理やらをやったついでに、春に向けて十数年ぶりのテントが使えるかどうか、引っ張り出してみました。買ったのは二十年以上前の、ロートルテントです。(未使用の空き教室でテントを広げたのは内緒の方向で。)

f:id:ponkotsu1000sei:20220222082024p:plain収納収納サイズ感は、隣に置いた私の靴(27センチ)と見比べてみていただければおおむねおわかりかと思います。改めて見ると、かなりガチめなテントでした。(上の方に小さなベンチレーターついてたし。)

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インナーはこんな感じで、前後に出入り口があり、メッシュも付いていました。(あまりにしばらくぶりで、仕様をさっぱり忘れていました。)

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フライシートを掛けるとこんな感じです。札幌の有名なアウトドアショップ秀岳荘オリジナル?の3人用テントです。買った時は、ただボーッと見ていただけなのに、店員さんの口車?セールストーク?にのせられて、気がついたら・・・あれっ?って感じでした。残念なことにいくらくらいだったか覚えてないんですよね。(お買い得とか言っていたとは思うけど。3万円くらいだったかなぁ?)使用回数が少なかったので、意外ときれいな状態で、十分使用に耐えうるしろものでした。ということで、ボーナスが出たら・・・と思っていた新テントはあきらめることにします。ある意味「誰ともかぶらないレアもの」だと「ドヤ顔」することも可能だし。(というか、そもそも誰もうらやましがらないけど。そういえば、さらに古い45年物の、ダンロップのツーリングテントもどこかにあるはずなんだけどナァ?)

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で、テント本体をこの前ポチったコンプレッションバッグ(アマゾンで1500円弱)に入れて絞ってみたのですが・・・イマイチ効果が実感できません。ほんの数センチ短くなって、太っただけのような???それにしても、以前ご紹介した30年物のプリムス2243とか、生産終了のプリムス171とか、20年物のテントとか、物持ちが良いというか、日本製が頑丈というか・・・以後、キャンプ関係のブログの時には、「ロートルキャンプ」シリーズを名乗ろうかと思っております。併せて、ここんとこキャンプ関係のYoutubeを見過ぎて、ついついポチってしまった物やら、面白かったYoutubeの番組やらをご紹介していこうと思います。それではまた、お会いしましょう。(←このくだり、よく見ている政治系Youtuber、イージスさんのパクリリスペクトです。)

 

 







 

「盆土産」についての小ネタあれこれ

前回までの「走れメロス」についてのアレコレは、こちらとしても意外なほどの長編になってしまいました。今回は「盆土産」についての小ネタを紹介していきます。これは多分1回で終わると思います。(ディスっているわけではありません。)

小ネタその① この教材を扱うにあたって、いつ頃の、どの地域での話か?という、場面設定の話は外せないと思います。まずいつ頃か。これはおそらく「高度経済成長期」の、東京に盛んに出稼ぎが来ていた時期であろう。(ひょっとしたら1回目の東京オリンピックのあたり?と考えることができ、今年度はちょうどタイムリーな話題になりました。)そして場所のヒントは「夜行で8時間+バスで1時間以上]、となると東京から相当離れている地域となります。まぁ我々大人なら、大体訛りで東北方面だな、と想像がつきますが、生徒は北の方なのか南の方なのか見当がつきません。クラスに鉄ちゃん(鉄道マニア)がいれば聞いてみると面白いのですが、これは東北方面ですね。なぜかというと、夜行列車が「東京駅」ではなく「上野駅」に着いているから。東北本線の終着駅は東京ではなく、上野だそうです。(注 私は鉄ちゃんではありません。)これは3年生の教科書の教材である「握手」の中で、主人公とルロイ先生が上野で落ち合ったこととも関連してきますね。(ルロイ先生は仙台の修道院にいましたし。)まぁそんなマニアックな知識を出さなくても、作者三浦哲郎が「青森県出身」ということを確認すれば済む話ですが。私らの年代だと「ああ上野駅」なんて歌を思いだし・・・(さすがにそこまで年寄りではありませんが。)

小ネタその2 この「盆土産」の重要アイテムはもちろんえびフライですが、もうひとつ挙げるとしたら何だろうか?そんなことを投げかけてみると、大抵の生徒は「ドライアイス」と答えます。まぁそれも有りっちゃあ有りですが、自己満へそ曲がり流としてはここは「ハンチング」を挙げるべきだと思います。以前書きましたが、「一見無駄に見える表記には必ず裏の意味がある」理論でいくと、この盆土産の中での「父親は、村にいる頃から、うさぎの毛皮の防寒帽でも麦わら帽でも、あみだかぶりにする癖があったが、・・・」のくだりが、どうも違和感がある。ということは、作者はここに何らかの意味合いを持たせたはず。さてその意味合いは?・・・の前に、「あみだかぶり」についてです。教科書では」帽子などを、前を上げ、後ろを下げてかぶること。」とありますが、なぜそれを「あみだかぶり」というかと言うと、「阿弥陀如来の仏像の光背のように見えるから」ということらしいです。で、生徒に「あみだと言えば?」と聞くとまぁほとんど「あみだくじ」と答えますね。これもちょっと調べると、昔のあみだくじは、今のように平行線で書くのではなく、放射状に拡げて書いていたそうです。それならば確かに、「阿弥陀如来の光背」のイメージにもつながりますね。さて、そのハンチングがどう後につながるかというと、一番最後に、主人公と別れるシーンで「父親は、何も言わずに、片手でハンチングを上から押さえてバスの中へ駆け込んでいった。」というところで出てきます。ここで「なぜ父親はハンチングを押さえたのか。」という発問を出しますと、二種類の答えが返ってきます。多いのは「まだ頭になじんでいなくて、谷風にちょっとひさしをあおられただけで慌てて上から押さえつけなければならなかった。」という表現からの読み取りで、「急いで駆け込んだから風で飛びそうになった。」という答えです。これはこれで立派な読み取りです。ただ、ちょっと読める生徒ならば、「別れが辛くて泣きそうになった父親が、泣き顔を見せると子供が辛くなるので、顔を隠すために上から押さえて隠した。」という答えを出してきます。自己満へそ曲がり流としては、わざわざ「あみだかぶり」の記述を入れた作者の思惑としては、やはりここは後者の「泣きそうな顔を見せたくなくてひさしを下げた。」と読み取っていく方が、作者の読み取って欲しい方向性に合っていると思います。つまりこの「盆土産」は、「ニコニコ顔でひさしを上げて帰ってきた父親が、別れの辛さにひさしを下げて東京へ戻っていく話」とまとめることができると思います。(私自身が父親なので、どちらかというと父親目線でこの話を読んでしまうから、ということもありますが。)

f:id:ponkotsu1000sei:20220216131627j:plain 「あみだかぶり」で思い出すのはこの人(チープトリック)

小ネタその3  私は授業の中で、最後の別れのシーンについて、セリフや動作の裏で登場人物が心の中でつぶやいているであろう言葉を考えさせますが、その時に男車掌の心理も考えさせます。その時に、道端に痰をはいてから「はい、お早くう。」というシーンの読み取りで、生徒が二分されます。一方は「親子の別れは辛いだろうけど、こっちも時間通りに出発しなきゃならないんだ。」という優しい車掌として読み取るひと、もう一方は「何だか知らないけrどこっちも急いでるんだ。早く乗ってくれや。」というあまり優しくない車掌とする人。これもどちらでも良さそうですが、自己満へそ曲がり流としては後者を善しとします。なぜかというと、まず痰を吐いていること。あまり思いやりのあるイメージにはなりませんよね。そしてもうひとつのポイントとして、これが「夕方の終バス」であること。つまり、このバスが終点に着くと、車掌も仕事が終わり家に帰れるわけですから、「さっさと戻って一杯引っ掛けてラジオでも(多分まだテレビはそれほど普及していない)聴きたいもんだ。」というのが、この時の男車掌の心中だと思うのですが、皆様いかがでしょうか?この盆土産は、姉弟がえびフライを、お互いの様子や心中をうかがいながら食べるシーンの読み取りなんかも、なかなか面白いと思います。ではまた次回、何かの教材に茶々を入れてを取り上げていこうと思います。よろしければまたお読みください。

 

なんちゃってキャンパーの密かな楽しみその5

北海道の記録的な大雪も一段落し、昨日今日と非常に良い天気になりました。外に出てもそれほど寒くもなく、家の周辺では盛んに排雪作業が進められています。(業者の皆様、お疲れ様です、ありがとうございます。)

さて、冬キャンプに行くほどの気合いも金も家族の理解もないので、家の敷地内で、初使用の焚き火台を使い(火事か怖いので薪ではなく炭火で)食べてみようと思い立ち、鳥串と豚串と椎茸とおにぎりとステーキ肉を焼いてみました。(食べたのは主に子供らですけれど。)

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焚き火台は東京キ〇ンプ 網はダ〇ソーさんのものです。

TokyoCamp 焚火台 焚き火台 折りたたみ焚火台 コンパクト 軽量 キャンプ 焚火

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  • Tokyo Camp\HAVE A RELAXING CAMPING LIFE
TokyoCamp 焚き火台 専用プレート 焚火シート 灰受け キャンプ 芝生保護 耐熱 スチール製 (単品)

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  • Tokyo Camp\HAVE A RELAXING CAMPING LIFE
TokyoCamp 焚き火台 オプションパーツ (短いサイズ)

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おにぎりと椎茸も焼いてみました。火吹き棒はビ〇パルの付録、薪ばさみはセ〇アで

110円(これは大きな炭も挟めましたし、かなりの重量にも耐えられますが、小さい物をつまむのはちょっと苦手ですね。)

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さらに半額(550円)だったステーキ肉を、家にあった鉄板プレートで焼いてみました。(食べたのは息子ですが、満足していたようです。)気温も全然寒くなく、まったりと3時間ほど外で過ごせました。そのうち晴れたらまたやろうと思ってほくほく顔で家に入ってみると・・・

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何と言うことでしょう!いつの間にか、頼んでいた〇CMのミニ鉄板が届いているではありませんか!以前からヒロシ鉄板(No164)がカッコイイので、欲しいなあと思っていたけれど、調べたら品切れ中とか?以前のFUKUさんのギアケースは運良く買えたけど、こっちはなかなか手に入らないらしいし、DC〇のは値段的にもヒロシ鉄板の半額以下だったので、だいぶ前にポチっていたのを忘れていました。これが届いていたのなら、試しに使ってみたかったんだけれど、まぁ次回のお楽しみということで。では次回(があれば)この鉄板を使って何か焼いてみようと思います。(それにしても久しぶりに体中が炭火くさいな。)

 

 

「走れメロス」の読解その⑩

このシリーズもなんとその⑩になってしまいました。細かくツッコむとキリがないこの短編小説ですが、最後にまとめて授業で困った小ネタなどをまとめて書いていきます。

小ネタその1 「結婚式も間近なのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに・・・」とありますが、婿の牧人は「こちらにはまだなんの支度もできていない、ぶどうの季節まで待ってくれ・・・」と答えています。季節は「初夏、満天の星である。」なので、ぶどうの季節が秋だとしたら、それまで待っていたら「ごちそう」が腐ってしまうのでは?・・・これは生徒の質問で出てきたもので、かなり返答に苦労しましたが、「塩漬けの肉とかそういう長期保存が効く物ではないか?」とお茶を濁しました。(多分これは太宰のやらかしですね。)

小ネタその2 「メロスの懐中からは短が出てきたので・・・」に対し、ディオニスが「この短で何をするつもりであったか。」と聞いているのはなぜか?これも生徒からの質問で、かなり困りました。メロスはヨーロッパの話ですが、調べてみると中国において「剣は兵器の君子」と呼ばれ、崇高で高尚な精神を表すそうです。それに対して片刃の刀は、剣と比べて習得が易しく、庶民的なイメージがあり、剣よりも若干品格が劣るということが、何かの本に書いてあった記憶があります。ということでディオニスは剣をわざと品格の落ちる短刀、言い換えればヤ〇ザ映画の鉄砲玉が使う匕首(あいくち)、というかドス?みたいな「下品なもの」扱いをして「わざと貶めた」のではないか?とお茶を濁しました。(濁してばっかりだなオイ。)まぁこれも単純な太宰の「やらかし」かもしれませんが、この二つは編集者が気づきいてもよさそうですがねぇ?

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小ネタその3 これはもう何というか、厨二病丸出しの、個人的な単なる思いつきというか妄想なのですが、「肉体の疲労回復とともに、僅かばかりながら希望が生まれた。義務遂行の希望である。我が身を殺して、名誉を守る希望である。」という表現について、ひょっとして太宰は「あるギリシャ神話のエピソードをモチーフにしているのではないか?」と感じたのです。そもそも太宰がギリシャ神話を知らなければ全く無意味な妄想ですが、このエピソードは絶対に知っていた。なぜならそういう題名の作品を書いているから。つまり、純粋な勇者であったメロスは、自分の心に、あるいは「悪魔のささやき」に負けて闇堕ちしてしまいます。メロスの心にそれまでにはなかった「猜疑心」「不信感」「絶望」「無責任」「責任転嫁」「自己中」その他もろもろ、醜い悪心がどんどん沸いてきます。しかし(水によって心が浄化され=禊ぎ?)全ての悪いものが出つくしたあと、最後に「希望が産まれた」・・・そうです。そのギリシャ神話とは「パンドラの匣」です。(ちなみに太宰がこんな作品を書いていたことは、今回初めて知りました。💦)このシーンには、「パンドラの匣」が反映されていたのではないでしょうか?(もちろんこの妄想にはなんの根拠もありません。単に「似ている」という連想だけです。ひょっとして研究者の間で定説だったとしたらすみません。まぁ多分定説ということはないと思いますが。)

パンドラの箱コトバンクより)・・・ギリシャの詩人、ヘシオドスの「仕事と日」に出てくる話から。太古の昔、人間たちは、神、プロメテウスによって火を使うことを教えられました。これによって人間たちの暮らしは豊かになりましたが、同時に、火を用いて争いをするようにもなりました。そこで、全能の神、ゼウスは、人間たちを懲らしめるために、パンドラという女性に箱(本来は壺)を持たせて、人間界へと送り込みます。絶対に開けてはいけないと言われていたその箱を、好奇心にかられてつい、開けてしまう彼女。すると、中から疫病、犯罪、悲しみなどなど、ありとあらゆる災いが飛び出してきました。慌てたパンドラが箱を閉めた結果、箱の中には「希望」だけが残された、ということです。

小ネタその④  実はセリヌンティウスはメロスのことを疑っていなくて、メロスに合わせて自分も疑ったふりをしたのではないか?と疑問を出した生徒がいました。これは明確に否定できますね。疑っていなかったらメロスが「悪い夢を見た」と抽象的な表現をしたときに、「全てを察した様子」にはならず、「え?悪い夢ってどういうこと?」とツッコむでしょうから。自分も悪い夢を見たから、意味がすぐわかった、と読解するべきでしょう。まったく、元ネタがあるといえ、あちこちに油断できない裏の意味をもつ表現が付け加えられた、読み取り甲斐のある小説ですね。

小ネタその⑤ 「メロスは激怒した。」が「勇者はひどく赤面した。」に変わっているのはなぜか、これも生徒からよく出る疑問です。もちろんこのシリーズで初めの方に書いた。「メロス(=勇者)は激(=ひどく)怒(=赤面)した。」の伏線とその結びにあたる部分、ということ。激怒の赤面で始まり、羞恥の赤面で終わるということは、二つ並べると生徒も全然読み取れます。併せてここは、原典そのままの、「神に愛でられた完璧な勇者と、その勇者を一度も疑わなかった親友の、単純なスポ根物友情物語」としては終わらせたくない、つまらないという、太宰治のちょっと皮肉っぽいユーモア、諧謔精神が表れている、ととらえています。(多分これは「自己満へそ曲がり流」ではなく、普通のストレートな読解だと思いますが、もし違ったらどなたか教えていただきたいと思います。)まぁこの表現を「自分の弱き心に打ち勝った勇者なんだけども、みっともないフリ○ン姿なんだよ」ととるか、「フ○チンでみっともないけど、これでも紛れもなく勇者なんだよ」ととるかで微妙にニュアンスが違ってくる気がします。自己満へそ曲がり流としては、「○リチンでかっこ悪いけどこれもまた勇者なんだよ」と、みっともなくても一生懸命頑張る人間を「善し」とする、太宰の明るい笑い顔が浮かんでくるような、後者のイメージが強く感じられます。

さて、とりあえず長々と書いてきました「走れメロス」シリーズは一旦終了させていただきますが、ちょうど今学年末テスト前で、まさにこの「走れメロス」をやっています。また授業の中で、生徒の斬新な質問など小ネタが出てきたらご紹介いたします。どっとはらい

 



 

「走れメロス」読解その⑨と訂正とお詫び

 

まずは訂正とお詫びからさせていただきます。このシリーズの⑤で、フィロストラトスの「今はご自分の命お命が大事です。」という言葉を、「原典にはない」と書きましたが、これは誤りで原典にもちゃんとありました。こちらの勘違いでした。大変申し訳ありませんでした。逆に太宰が、原典ではメロスの弟子(あるいは召使い?)であったフィロストラトスが主人をおもんばかったセリフを、セリヌンティウスの弟子ということに設定を変えたのに、原典のセリフだけそのまま使ったために、少々意味の分かりづらい言葉になってしまった、というのが正解だと思われます。(原典ではメロスは吐血していないので、メロスの健康状態を心配して、というのも当たっていないことになります。重ねて申し訳ありませんでした。)

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さて、ではあらためまして・・・メロスとセリヌンティウスは、何も言わなくても以心伝心で通じる関係だということは、メロスが王城から村に戻る時に、セリヌンティウスが無言でうなづき(=帰ってくることを確信しているから「絶対帰ってこいよ。」とか「信じてるからな。」とか余計なことをいう必要がない)ひしと抱きしめた(=メロスは間違いなく帰ってくる→メロスは間違いなく処刑される→死亡フラグが立っている→これが今生の別れ!という万感の思いをこめた抱擁)あたりでも分かります。ちなみにこの表現は、原典でも出てきますので、シラーが原典の詩を書く段階で、その含みを持たせて書いたものと思われます。

しかしながらその信じ合う心は、村から戻る途中の三つの(フィロストラトスを入れれば四つの)難関を突破する途中で折れてしまいます。一つ目の川(=自然)は愛と誠の力で、二つ目の山賊(=他人)は正義の力で乗り切りますが、三つ目の身体疲労と精神(=自分自身の弱い心)には負けてしまいそうになります。

ところで、この三つの難関について生徒からよくでる疑問として、①「山賊は本当に王の命令で来たのか?」②「なぜ水を飲んだだけで復活したのか?」というものがあります。自己満へそ曲がり流読解(というか、これらはほぼ全ての先生もそう教えると思いますが)①は明らかに王の命令で来たように太宰が書き換えています。

「人質」の表記→しばらく行くととつぜん、森の暗がりから一隊の強盗が躍り出た。行手に立ちふさがり、一撃のもとに打ち殺そうといどみかかっ。飛鳥のように彼はとびのき打ちかかる弓なりの棍棒を避けた。「何をするのだ?」驚いた彼はあおくなって叫んだ。「私には命の外はなにも無い。それも王にくれてやるものだ!」。いきなり彼は近くの人間から棍棒を奪い、「不憫だが、友達のためだ!」と猛然一撃のうちに三人の者を彼は殴り倒し、後の者は逃げ去った。

このように、原典には「その命がほしいのだ。」も、「さては王の命令で〜」も、なにより「山賊たちは、ものも言わず」という、王の命令であることの「におわせ」の言葉も一切ありませんから、リアル山賊だったとみるべきでしょうし、太宰は明らかに「まず帰ってこない、あるいは命が惜しくて遅れてくると思うけど、万が一帰ってきた場合(→王の面目丸つぶれ)に備えて保険をかけた王の命令」と「読み取ってもらいたがっている」ので、素直にそう読んでおくべきでしょう。

その②について。まずメロスが倒れた理由ですが、「二日間徹夜」「結婚式の準備」「三日間で合計約120キロの移動」「前日深夜まで宴会(飲酒?)」「飲まず食わず」「濁流を泳ぐ」「峠を登り駆け降りる」「山賊(推定5人?→「残る者の」は複数のイメージ)との格闘」「高温(午後の灼熱の太陽)」からの「めまい」ときたら、これはおそらく「熱中症でしょうね。(昭和なら日射病?あとハンガーノックの可能性もあり)だとしたら、「水分補給」と「まどろみ=短時間の睡眠」で回復するのは、医学的にもまぁ納得できなくはないですね。

ところで、このメロスの闇堕ち場面の、長い長い独り言は、原典ではほとんど出て来ません。倒れてちょっとボヤいたらすぐ水を見つけ、飲んですぐ走り出します。つまり原典ではメロスは全く闇堕ちしていない。徹頭徹尾神に愛でられたステレオタイプのシンプルなヒーローであり、勇者なのです。それに対し、この太宰オリジナルの長い独り言については、あっちに行ったりこっちに行ったり、上がったり下がったり、まさにジェットコースターのように揺れ動きます。同様に、「走る理由」もどんどん変わっていきます。

①村を出るとき・・・人の信実の存するところをみせてやろう、殺されるため、身代わりの友を救うため、王の奸佞邪知を打ち破るため、名誉を守れ

②復活して走り出す時・・・私を待っている人があるのだ、静かに期待してくれているひとがあるのだ、私は信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。私は信頼されている、正義の士として死ぬ、正直な男のままにして死なせて、その男を死なせてはならない

③フィロストラトスとの会話から・・・信じられているから走るのだ、間に合う、間に合わぬは問題でないのだ、人の命も問題でないのだ、なんだかもっと恐ろしく大きいもののために、メロスの頭は空っぽだ、何一つ考えていない、訳の分からぬ大きな力に引きずられて走った

まず「恐ろしく大きいもの」とは、「恐ろしく」て「大きいもの」ではないこと、つまりゴジラみたいなものではなく、「とてつもなく大きいもの」である、と確認します。そのうえで、多くの生徒は、「恐ろしく大きいもの」とは?という問いに対し、最初の目的である「王の考えを正すため」「信頼に応えるため」と回答します。しかしながら、これらは「間に合わないと実現できない」ことであり、「間にあう間にあわぬは問題ではない」というセリフに矛盾します。また、「友の命を救うため」も同じく、「人の命も問題でない」に矛盾します。毎年ここで生徒はわけがわからなくなります。ここは逆に、書いてあるとおり素直に「信じられているから」と考えるとしても、ちょっと言葉足らずでわかりづらいかもしれません。なぜならば、多分メロス自身も、具体的な言葉にするのが難しいし、そもそも頭が空っぽで、何も考えていない、言わば理性ではなく訳のわからない感情が彼を走らせているし、それは「信頼にこたえなければならぬ」という義務感からさらに一歩進んだ、「信頼には応えたいから」という、理性をこえた感情であり、もっといえば「自分がそうしたいから」という、むしろ究極の自己中心的衝動といえるのではないでしょうか。

そもそもメロスの行動を振り返ると、「勝手に」というものばかりです。勝手に王に対しブチ切れ、勝手に殺しに向かい、捕まったら勝手に友を身代わりにし、勝手に結婚式を挙げに帰り、勝手に結婚式の日程を変え、勝手に準備のできていない婿を新郎にし、倒れてからは勝手に悲劇のヒーローぶり、勝手に友を疑い、勝手に悪徳者になろうとし、勝手に婿にやったはずの羊を取り返そう?とし、勝手にあきらめ、勝手に復活し・・・数えたらきりがありません。「独り合点」「独りよがり」と似た言葉が二回でてきますが、まさに「独りよがり」の連続でした。ただ、「こたえねばならぬ」という義務的な意識から、さらに変容した、「したいからする」という意識は、自分勝手ではありますが純粋であり、本能的なものとすら言えるかもしれません。で、結局ポンコツ先生としては、「恐ろしく大きいもの」とは「信頼には応えたいという、人間の本能的な感情」と教えています。ひょっとしてこのサイトをご覧になっている国語の先生がいらっしゃったら、何と教えているかぜひご教授願いたいと思います。

さて、今回は以前の投稿のミスの謝罪を入れたこともあり、やたら長くなってしまった上に、わかりきった内容がほとんどで心苦しいのですが、読んでいただいた皆様、ありがとうございます。次回もメロスがらみですが、よろしければまたおつきあいください。

 

「走れメロス」の読解その⑧

生徒がよく読み違いする箇所として、「刑場で二人が殴り合った後、うれし泣きにおいおい泣いたのはなぜか?」という発問に対し、①「間に合ってセリヌンティウスの命が助かったから」という答えが多いのですが、これは違いますね。同じく②「メロスが許してもらっていのちが助かったから。」と答える生徒もいますが、これも違いますね。なぜなら二人がうれし泣きした段階では、ディオニスは許すとも許さないとも言っていませんから。ここで二人が泣いたのは、「お互いに自分の中の醜い部分をさらけだしあい、お互いに許し合うことで、心に一点の曇りもなく、友と友の間の信実を確認できたから」とでもなりますか。(ここで二人の頭には、どちらかが処刑されることなど全くなかったはずです。「人の命も問題でないのだ。」ということでしょう。)

ところで、この時この二人は、自分の中にあった闇の部分、ダークサイドをお互いに、しかも大群衆が見守るなかで、告白する必要もないのにさらけだしあいます。ギリギリ間に合ったのだから信義や約束は最低限守られたわけで、なぜ自分の中の、一番恥ずかしい部分をさらけだしあったのか。もうこの段階では「間に合って友の命を救う」ことは頭になく、「隠し事のない誠実な友でありたい」こと、「今はただその一事だ」から、群衆や王が見ていることなど頭にない。=以前のメロスとは違い、「人にどう見られるかなど頭にない。目にはただ自分の前の友だけが見えていて、その友とお互いに誠実な関係に戻れたことが嬉しくて泣いている、と解釈しています。

このあたり、全国の教師を悩ませる、「なんだか、もっと恐ろしく大きいもの」とはなにか(99%の教師が触れ、しかも「これだ!」という決定的な読解が難しいメロス最大の難問)とも関わってくると思いますが、ここではちょっと後回しにします。

ここで太宰が「メロスを裸にした意味」が、単に見た目だけではなく、「心まで」裸になった、つまり「良いところも悪いところも含め、自分の内面まで全て隠し事なくさらけだした」ということがわかると思います。生徒にも、「風体だけが裸になったわけじゃないんだよ」といえば、「心も」という読み取りはすぐに出てきます。

ディオニスが素直に二人の誠実さを信じた理由はここにあります。つまり、かつてディオニスの側にいた「口では、どんな清らかなことでも言えるけど実際の行動が醜かった、王を人間不信にした誰か」とは真逆の、「みっともない風体で、言う必要のない自分の醜さをわざわざ口に出しているのに、行動は清らかで群衆がその醜い告白を含め認めている二人」の言動を「信用できる」と思ったのです。

ディオニスもやはりこの「二人が、告白する必要のない、自らの醜い内面を、大衆の耳目も気にせず、文字通り赤裸々に告白し、それでも人は許し合い、わかり合うことができる」ことを知った。いってみれば「みっともないが絶対的に信用できる正直さ」が、ディオニスを闇落ちから立ち直らせ、元の「臣民がしたう善良な王」へと引き戻したのです。

余談ですが、生徒が問題を起こしたときにありがちな話で、「こちらが聞いている以外の、黙っていればわからないような、自分のやらかした内容を告白してくる生徒」のことは、何となく信用出来ます。(まぁ大抵その後何回もやらかすんですが。)これなんかもひょっとしたらディオニスの心理に近いかも知れません。

とにかく、太宰は原典の単純な「神の加護を得た英雄譚」ではなく、いかにも人間くさい、みっともなくジタバタする中で救いを見いだす、そんな話に書き換えたのだと、「自己満へそ曲がり流」では分析します。(分析なんて言うと、ちゃんと勉強している人達にとっては噴飯物なのは重々承知ですが、とりあえずこのポンコツ爺さんはそう読みました。)では次回はいよいよ「恐ろしく大きいもの」について考えていこうと思いますが、正直これについてはあまり自信がありません。でも100%の国語教師が触れるこの読解を避けるわけにはいきませんので、「自己満へそ曲がり流」に読解してみます。よろしければまた読んでやってください。

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「走れメロス」の読解その⑦

小説は、大抵何らかの変化を書くもので、前回述べた内容を使うならば、走れメロスは「人間不信で顔面蒼白になったディオニスが、人間らしさを取り戻して羞恥で赤面する物語」とまとめることができるかと思います。同じくメロスで言うならば、「激怒で赤面したメロスが、羞恥で赤面して終わる物語」とまとめることができます。90%の先生が触れるであろう、この物語全体を通じてのイメージカラー「赤」の意味することを考えていくのは、メロスの読み込みに非常に大事な要素となります。物語の順番に拾っていくと・・・

・メロスは激怒した。・妹は頬を赤らめた。・歓喜に酔っているらしい花嫁・花婿はもみ手して、照れていた。・日は既に西に傾きかけている。・午後の灼熱の太陽が〜・真紅の心臓をお目にかけたい。・愛と信実の血液だけで動いているこの心臓・斜陽は赤い光を木々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。・二度、三度、口から血が噴き出た。・塔楼は夕日を受けてきらきら光っている。・赤く大きい夕日ばかりを見つめていた。・まだ日は沈まぬ。・日はゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も消えようとしたとき・刑場いっぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。・メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。・顔を赤らめてこう言った。・一人の少女が、緋のマントをメロスにささげ。・勇者は、ひどく赤面した。

これ以外の色といえば、最初の夜の町の「黒」と宴会の時の黒雲、暴君の蒼白な顔くらいでしょうか。やはり圧倒的な赤のイメージの強さが目立ちます。

(蛇足ですが、メロスとセリヌンティウスがお互いに刑場で殴り合った時、生徒の中には意外に「グーパンチ」で殴ったイメージを持つ生徒が多くいます。刑場いっぱいに響くほどのグーパンチなら、頬が腫れるどころではなく、メロスが失神して話が終わってしまいますから、ここは平手打ちと考えるべきですが、「殴る」という言葉のイメージは、生徒にとっては「グーで」なんですね。)

さて、いよいよメロスの読解の心臓部である、「ディオニスはなぜ改心したのか」ということについての「自己満へそ曲がり流読解」に移ります。以前にも述べた通り、単純に「メロスとセリヌンティウスの熱い友情、人と人との信実に感動したから」ではなく、「メロスが裸だったから。」という読解について書かせてもらいます。

まず、原典と「暴君ディオニスは、群衆の背後から二人のさまをまじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔を赤らめて、こう言った。」の箇所の改変について考えます。原典ではディオニスは刑場にはおらず、顔を赤らめてもいません。当然太宰は何らかの意図を持って①ディオニスを刑場で実際に見聞させ、②赤面させた、ことになりますが、その改変の意図を考えた時に、自己満へそ曲がり流読解では、以下のように考えます。

その①ディオニスを刑場に居させた理由は、ディオニスに二人の様子だけではなく、刑場に集まった群衆の反応を見せさせたかったから、だと思います。つまり、メロスはギリギリ間に合ったわけですから、本来であればこの後、王はセリヌンティウスを放免し、メロスをはりつけにしなければなりません。ところが群衆は、あっぱれ、ゆるせ、と口々にわめくわけです。さすがに暴君とはいえ、この状況では「はいはい、でも約束だからメロスははりつけにしますから〜残念❤」とは言いづらい。そして何より、おそらく王はもうそろそろ人を殺すのに飽き飽きしていたのではないか、と思われるのです。「暴君はおちついてつぶやき、ほっとため息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」の表現あたりに、その片鱗がうかがえます。ディオニスは人の心理を、ひいては場の空気を読む能力に長けています。だから、約束通りここでメロスを処刑することと、これを機会に人殺しをやめることを天秤にかけて考えたのでしょう。逆にいえば、もし人殺しをやめるなら、この機会しかない。だが、自分は王として負けを認め、約束を違えてメロスを許すことになる。それはかなり恥ずかしい。

その②負けを認めることは、王としては威厳が下がってしまう、かなり恥ずかしいことだから、顔を赤らめて告白します。ただ、その「王としての威厳がだだ下がる恥ずかしさ」を乗り越えさせ、赤面しながら和解を申し出ることにした理由こそが、何度も述べてきた「メロスが裸だったから」なのです。「やってきたメロスが、口元や胸が血だらけで、服がボロボロでほとんど素っ裸の、果てしなくみっともない姿だったから。」なのです。つまり、「自分の何倍もみっともない、恥ずかしい姿をさらしているメロスがいて、なおかつその姿を群衆が『尊い』と感じているからこそ、自分も恥を忍んで和解を申し出ることができた」のです。自己満へそ曲がり流「ディオニスが改心したのは、メロスが裸だったから。」とはこういう意味です。ここでちょっと想像してみてください。「もしメロスが全然トラブルに遭わず、日没よりはるか前に、きれいな格好で刑場に現れ、メロスが思った通りに高らかに笑いながらはりつけの台に登って、かっこよくディオニスに『さぁ私を貼り付けにしろ』と言ったら?」どうなるでしょうか。

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果たして太宰版のディオニスは原典のように、素直に「負けた」と認めて改心するでしょうか?私はディオニスはむしろ「ぐぎぎぎ」と腹を立て、さらに意固地になり、約束通りメロスを処刑し、さらに暗黒面の深いところに入っていくとしか思えません。メロスが格好良く颯爽としていれば、ディオニスも威厳を保ち格好つけるしかなくなります。メロスがみっともなかったから、ディオニスも恥ずかしい振る舞いをすることができたのです。

長くなってしまいました。この件については、もう少し付け加えることがありますが、それはまた次回。よろしければまたお付き合いください。