ポンコツ先生の自己満へそ曲がり国語教室と老害アウトドア

中学校の国語や趣味に関する話題を中心に書いてます。

こんな雑談をしてきたその11(おくのほそ道と山本譲二)

老害であることは重々承知ですが、それにしても年々、授業の雑談の中で話す「ヒント」が通じなくなる一方で、悲哀を感じる今日この頃です。

さて、「松尾芭蕉」の「おくのほそ道」の授業の中で、なぜこんな題名になったか、ということは多くの国語の先生が説明することと思いますが、そのヒントがぜんぜん通じなくなりました。(というか、昔の教科書では「奥の細道」という表記だったような気がしますが?)

いろんなやり方があるとおもいますが、私はまず冒頭文の「歌枕」の地である「松島」「白川の関」から、この旅が「東北方面」に向か旅であることを確認したあとで、東北地方の別名を質問します。ところが・・・結構できる生徒でも、「奥州」は出てきても「ひらがな四文字のアレ」はでてこない。そこで、昔は通じたのに現代ではまず通じないヒントその1を出します。

「ヒントその1 東北6県を中心に回っている、ザグレートサスケなどが中心のプロレス団体をなんというか?」まぁこれは結構コアなプロレスファンがいないクラスでは、全く答えが出てこずにポッカーン、ですね。(そもそも新日本とか全日本とかすら知らないかも。一時期かなり熱烈なプロレスファンだった身からすると悲しい限りですな。)

ザ・グレート・サスケ vs ラッセ【みちのくプロレス】2022.5.3 - YouTube

これでもダメな場合として出てきたヒントその2「北島三郎の弟子の山本譲二が歌っていた、ホニャララ一人旅てあっただろ?」・・・当然のごとく、ポッカーン、ですよ。

いつごろからですかね、これらのヒントから「みちのく」という答えが出てこなくなったのは。というかそもそも「みちのくというんだよ。」と教えても、初めて聞いたわ~的な顔をしている生徒ばかりになってきました。そうなると、「みちのく」=道の奥→奥のほそ道、という芭蕉のシャレも、あまり新鮮な発見という感じにはなりません。昔はみちのく(陸奥、とも書きますね)あたりで気づいて、「あー!」というアハ体験(死語)する生徒が何人かはいたものです。

そして、今回教科書を見て気づいたことが一つ。多くの国語の先生が、この「おくのほそ道」の範囲でテストを作るとき、定番のように出題するのが「北上川南部より流るる大河なり。」の部分の口語訳だと思うんですよ。私自身毎回まいかい「ここの訳は間違いやすいから注意するんだぞ。」と、匂わせどころかほぼ「出題するからな」的なことを言っているのですが、それでも生徒が平気でやらかしてくれるのでざまぁみろ己の指導力不足が残念でなりません。

北上川南部より流るる大河なり。」の口語訳の誤りは、大きく分けて二種類あり、多いのが「北上川の南部から流れる大河がある。」と、二つの川があるように訳す間違い。そしてもう一つは「北上川は南部から流れてくる大河である。」という訳。前者は論外として、後者の間違いである「南部」のとらえ方を、「南の方」と読み違えないように、授業の中で略地図を描き、そもそも「北が川上だから北上川だぞ。(語源がそうなのかは知りませんが。)」と強調し、そして、この「南部」とは「南部地方とか南部藩という意味だぞ。」と強調します。

さらに、「砂金や鉄、それから馬の名産地だったこと」に絡めて、「南部鉄器」「チャグチャグ馬っこ」「南部せんべい」なんかを引き合いに出して、「南部地方」の印象付けに必死になるのですが・・・でもまぁテストの時には、みごとなまでに忘れてくれるわけですよ。父ちゃん情けなくて涙が出てくらぁ。

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ただ、昔の教科書では「南部 ここでは南部領を指す」などとあっさりとした脚注だったのですが、今回の教科書では「北上川は南部地方から流れてくる大河である。」と、モロに口語訳が書かれていました。(だからって、例年通りの口語訳の問題を出したとして、飛躍的に誤答率が減るとも思えませんが。)

ということで、また一つ教科書が至れり尽くせりになっていたことを発見しました。少なくとも、「そもそも教科書のここに書いてあるだろ。」と言えるのは間違いないですね、良いか悪いかは別として。でも例え脚注に書いてあっても、南部鉄器や南部せんべいの雑談をしなくなることはないでしょう。(とはいえ、定年を控えた身としては、あと何回授業で触れることがあるやら・・・)それではまた。